飢餓や貧困や戦争よりも根絶が難しいもの
人体や環境に有害なプラスチックの危険性と、そういったプラスチックを避けて、エコで健康的な生活、プラスチック・フリー生活を実現するための具体的な対処法をまとめたガイドブック。
負担何気なく使っているペットボトルやラップなどの健康への影響や、え、そんなものにまで有害なプラスチックが含まれているの?という衝撃の事実など、目からウロコがザラザラと大量放出請け合いのお役立ちブック。
生活の中のプラスチックを減らすための対策も、色々な生活場面を想定し、微に入り細を穿ち、具体的に提示されており、実用性も申し分ない。
さすが小島慶子氏推薦の一冊である。
あるのだが。
同時にこれは、人類とプラスチックの戦争における、人類の圧倒的劣勢が赤裸々に記された絶望的な戦況報告でもある。
筆者たちも文中で述べているが、プラスチックについて深く知りつくし、その対策を懸命に模索・実践している筆者たちでさえ、自分たちの生活からプラスチックを完全には排除出来ないでいるのだ。
それだけ、プラスチックという物質が、私たちの生活に深く食い込み、根付き、分かちがたく結合してしまっていることを象徴している。
しかも、これから使うプラスチックの量を減らすことは出来ても、すでにこれまでに環境に放出されてしまった、大量のプラスチックを片付け、無害化する十分に有効な方策はまだ人類にはないようだ。
人類を長年悩ませてきた、飢餓や貧困や戦争といった問題は、極端な話、人類を絶滅させれば道連れに解決可能だ。
だが、プラスチックは、人類が滅びようと、世界に残留し、いつまでも動植物の生態系に悪影響を及ぼし続ける。
人類はついに、飢餓や貧困や戦争よりも解決困難な問題を発明してしまったのだと、読後、途方にくれてしまった。