問題を解決しようとして問題が発生する
などなど、本当に「最悪」な発明についての本ではない。
兵器も本書で紹介されているが、間違っても実用的な大量破壊の目的を達成できるような代物ではない(安全性が低かったり、戦場で役立たずだったりと、使用者の死亡リスクを高めるようなものは含まれるが)。
本書で紹介されている発明品は、あまり実用的ではなかったり、発想が珍奇であったり、単なる不良品であったりといったものだ。
例えば、サイコロ型のテニスボール。
例えば、付属した気球で空を飛ぶ車(ただし軽量化のため、車のエンジンは外されている)。
例えば、家畜の糞で走る車(寒いと動かない)などである。
明らかなジョークグッズもないことはないが、紹介されている発明品のほとんどは、何らかの問題の解決を目的とした、いたって真面目な取り組みの産物である。
だが、どの発明品も問題点だらけで、そもそも解決しようとした問題そのものより多くの害悪を生む代物ばかりとなっており、日の目を見る前にお蔵入りになるか、日の目を見ても非常に短命に終わる運命を迎えている(中には熱心なマニアが延命させているものもある)。
だが、それは本当の「最悪」ではない。
本当に「最悪」なのは、当初の問題以上の問題を撒き散らしながら、それでも世間でもてはやされ、大量に出回っている発明品だろう。
身を守るための銃が、社会そのものの治安を脅かす凶器となり、生物の進化を論理的に説明した進化論が、ホロコーストの理論的根拠となった優生思想を産み出したりといった例を挙げればきりがない。
そういった本当に「最悪」な発明品と比べれば、本書で紹介されている数々の発明品は、大した被害を出さないうちに、早々にこの世から退場しているという意味で、むしろ「最悪」ではない発明品なので、気軽にその顛末を眺められるから安心である。