百姓になりたい百姓百太郎の日記

現在無職の百姓百太郎が、真の百姓を目指す日々の記録

200ドルの価値があるハンバーガーを4ドルの値段で食べられる狂った世界

 

値段と価値―なぜ私たちは価値のないものに、高い値段を付けるのか?

値段と価値―なぜ私たちは価値のないものに、高い値段を付けるのか?

 

金融資本主義、要するにお金儲けを至上の価値観とする社会が必然的に迎える破局と、その破滅を回避するための価値観の転換や社会的活動の重要性と緊急性を明解な論理で率直に説いた一冊。

 

値段は、事物の価値を表していると、多くの人が認識している。

 

だが、値段とは、そのものの本来の価値とは関係なく、お金儲けの衝動に駆られた人間の都合で好き勝手につけられたものなのだと著者は主張する。

 

その一例として、マクドナルドのビッグマックが紹介されている。

 

本書の例では、ビッグマックの販売価格を4ドルとしているが、その実際の原価は、ある計算では200ドルにもなるのだという。

 

その原価計算に含まれるのは、ビッグマックの製造によって排出される温室効果ガスの処理費用、糖尿病や心臓病といった食生活のせいで罹る病気の医療コスト、原料の牛の飼料となるトウモロコシに支払われる政府助成金ビッグマック製造に関わる従業員の低賃金を補てんするために支払われる政府の福祉サービス費用などである。

 

これらを合計すると、一個のビッグマックの製造に200ドルはかかるのに、実際の販売価格は4ドルである。しかも、マクドナルドはそこからさらに利益すら得ている。

 

これはつまり、マクドナルドは、差し引き196ドル以上の原価費用を自社で負担せず、他のところに押し付けているということだ。

 

では、押し付けられたコストを支払うのは誰かというと、それは社会である。

 

要するに、私たちが税金や医療費として、別な形で支払うのである。

 

これが本書で問題としている、値段と本来の徒とのギャップだ。

 

しかも、問題はこれですまない。

 

ビッグマックの原料の牛を育てるには、広い敷地が必要だ。

 

そのためには森を切り開き、土地を確保しなければならない。

 

その結果、伐採された森が吸収するはずだった二酸化炭素は野放しとなって地球の温暖化を悪化させる。

 

温暖化による気候変動が引き起こす洪水や台風による被害は甚大だ。

 

かといって、一度失われた森の再生は、お金を払うだけでは出来ない。

 

長い時間と、それを世話する膨大な労力を投入しなければならない。

 

例えそうしたとしても、複雑な相互作用によって成り立つ生態系としての森を再生できるかどうかは怪しい。

 

マクドナルドが金銭的な利益を産み出すために、社会や環境に押し付けるコストの中には、金銭では取り返しのつかないものもあるということだ。

 

このような例は、マクドナルドだけに限らない。

 

利益のために、社員に心身の健康を損ねるレベルの過剰労働を課すブラック企業や、電化製品のコスト削減のため、人民を不当に弾圧する軍事政権から材料となる鉱物を輸入する企業や、廃棄物処理のコストを惜しんで河川を汚染する企業など、この手の事例は枚挙に暇がない。

 

社会全体が、金銭的利益を産み出すために、莫大なコストを目に見えない被害者たちに押し付けたり、取り返しのつかない傷を環境に与えたりしている。

 

値段に惑わされず、値段に反映されない真の価値を中心に営まれる社会への転換が必要であると、本書は力強く訴える。

 

膨らみ続ける恐ろしい規模の「ツケ」で、人類と地球が破産する前に、返済のあてを見つけなければ未来は破滅だ。