百姓になりたい百姓百太郎の日記

現在無職の百姓百太郎が、真の百姓を目指す日々の記録

言及されざる狂気

 

身寄りもお金もなく貧窮する姉妹の、それでも明るく楽しくなかむつまじく暮らす日々を描いた作品。

 

悲惨な境遇にあっても、互いを思いやりながら、小さな幸せを丹念に積み重ねていく姉妹愛に、度々涙を誘われる。

 

ギャグマンガだが、姉妹を中心とした暖かい人間関係が大河のごとき底流にあり、ページをめくるごとに否応なく癒される。

 

ただし、このマンガで描かれる姉妹愛には、不可分の狂気が混在している。

 

お互いがいれば幸せという二人だけで完結した世界の住人である二人の世界観は、鎖国状態の日本のように、周囲から隔絶された価値観を醸成し、ガラパゴス化している。

 

自分達にとっての日常が、他者の非常であることはままある。

 

そのギャップを笑いに転化する加工手法の一つがボケとツッコミだが、この作品には、意図的に放置されたボケ=非常がたくさんある。

 

他者が絡む場面では鋭いツッコミが入るのだが、姉妹だけの場面では基本そのボケ=非常は放置だ。

 

進化論に従えば、ガラパゴス化は世代を重ねるほどに進行し、元は同じ種でも、遂には交雑が不可能な段階に達する。

 

行きすぎた愛によって周囲から隔絶された姉妹のガラパゴス化した日常は、すでに他者から見れば理解不能の狂気の沙汰にまで進化している。

 

ツッコミ不在の状況で、何事もなかったかのように素通りしていく言及されざる狂気が、この作品の重要な魅力の一つとなっている。

 

姉妹が口噛み酒のように醸成した微笑ましい狂気に癒されたい、現代社会の同調圧力に日々心を削られている方にオススメの二冊。